「華竜の宮」上田早夕里。

華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

260mもの海面上昇のあと、住む場所を奪われた人類は、陸上に住む陸上民と、遺伝子操作による身体改造を施し海上に住処を求めた海上民とが共存していた。
が、日々トラブルは起き、日本の外交官青澄は東奔西走していた。そして、追い討ちをかけるように、新たな災厄が訪れる予想がなされ…。


凄かった。
人はなぜ生きるのか、どう生きるべきか、色々考えさせられる内容。SFだけどファンタジー過ぎず、真に迫っていた。
欲得で行動するのも、世界の平和を目指すのも、どちらも人間らしい。ぶっちゃけ極限状態で絶望的な展開しかない場合、どちらが正解かなんて最早どうでもいい。ただ魂の命じるまま生き抜くだけでいい。主人公の青澄はその意味でとてもカッコよかった。彼とアシスタント知性体マキとの関係に熱い男の友情(もしや愛情?)が感じられてウルッときた。海上民の長ツキソメは美しかった。タイフォンは切なかった。リアルの日本の外交は本作を見習って欲しいと思った。
『魚舟・獣舟』は本作の前日譚にあたるけれど、読んでなくても問題ないね。大作でぶ厚くて、読み応えあり。大満足。