傷口にはウォッカ大道珠貴「傷口にウォッカ」。
親が金持ちって良いな、というお話。
・・・ではないけれど、読んだ人の殆どはそれを感じずに入られまい。お金に不自由していない人は、いつまでも曖昧模糊な生活をしていられるのだな、ふむふむ。
主人公は40歳独身彦野永遠子、定職に付いた事はなく、今の清掃の仕事も趣味の領域、したいときにしているだけ。親から多額のお小遣いを貰いちょっと豪華なマンションに暮らしている。恋人はいるにはいるが、結婚したいのかどうか不明、一番好きなのは4歳下の弟。
人と上手く付き合えない、でも人恋しい、誰かと一緒に暮らしたい。やらなきゃないことは別にない、これからやりたいこともわからない。長生きできるかどうか心配、だけどウォッカをラッパ飲みして、その沁みる痛みで生きている事を確認する。
こういう“なんだかわからない”不安は誰でも抱えているのだろうけれど、普通の人の場合それどころではない生活があるものなのだ。けれど永遠子はお金に不自由がないためあっけらかんと日々を送るだけ。
小説が面白いかどうかは、共感の度合いで決まるのではないかと思うけれど、この作品の場合は共感はできるんだけどね・・・、の「・・・」が多すぎ。「弟と暮らしたい」それはわかった。でもそれだけだ。投げやりな生き方だけを書かれても、明日からの活力にならないわ。それに性癖の描写がシツコイよ。(まあ、一番の問題はここにあるのかも。こればかりは生理的に合う・合わないがある)
書店は褒めるのが基本だし、この本を1500円出して買うのはどうかと思い、あっちには書かない事に。
・・・
と、ここまで読み返してみると怒り心頭しているような感じだが、特段怒っている訳ではないのだ。おお!という表現も多数あったし。
この方の本は初めて読んだのだった、長嶋有中村航絲山秋子似ているのかな〜と思って。結果、似てるっちゃ〜似てるかもな。