絲山秋子「海の仙人」。

海の仙人

海の仙人

不思議なお話でした。ファンタジーって何?私も彼に会えるかな。会ったら直ぐにファンタジーって気付くかな。
短い話なのに、長く感じました。河野やかりん、片桐、澤田、なかなか思いは遂げられず苦しく、人の世は厳しい。最後はちょっと明かりが灯った感じ。
ネタばれだけど、過去の姉との近親相姦や再会の場面、恋人かりんの死とか、描写がサラッとしすぎだし、片桐にしても澤田にしても重要登場人物っぽいのにほんのわずかしか語られない。でもそれで充分なんだな、と。後は読み手に委ねられるのが、純文学なのではないでしょうか、とわかったようなことを言ってみる。

書店のレヴュー

宝くじで3億円が当たったことをきっかけに会社をやめ海辺の町でひっそりと仙人のように暮らす河野勝男。ある日ファンタジー(神?)が現れ一緒に暮らすことに・・・◆わずかP150なのに重みのある物語。主人公は少年期のトラウマを抱えている。そこに不意に現れたファンタジー。神様らしいがあまり役に立っているとも思えない居候に、誰もが懐かしさをおぼえるという。どんな人間でも孤独を背負っているのなら、その孤独と向かい合う時の何かがファンタジーという存在なのかな。◆暗い出来事が多く描かれているけれど、さらっとしていて簡潔で、読みやすい。06/03/22 ★★★★