「インディアナ、インディアナ」レアード・ハント。
- 作者: レアード・ハント,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/05/03
- メディア: 単行本
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ストーリーらしきものはなく、詩か散文のような想い出語りが続くのですが、それが本当にあった想い出なのか夢の話か妄想なのか曖昧で、文章もつたない感じ。時折挿入される手紙も幻想的な文章。おかげで、何度も眠気に誘われ陥落しました(汗)。
それに耐えて読み続けると、次第に主人公ノアの身の上が浮かび上がり、この話が大変悲しく美しい愛の物語だということがわかるのです。
ここから先は思いっきりネタばれです、すみません。
忘れないように記しておきます。
語り手のノアは生まれつき精神を病んでいるか、あるいは知的障害者かもしれない。人に見えないものが見え、発作を起こしたりする。
父のヴァージルと母のルービーと3人で農場に暮らしていた。
やがて、美しい娘オーパルと出会い恋に落ち、二人は結婚を願うようになったが、妨げがあった。オーパルもまた精神を病んでいたのだ。
二人の家族は話し合った結果、二人の願いをかなえることにしたが、婚姻はさせなかった。形だけの結婚式を挙げ、二人は一緒に暮らし始めた。幸せだった。
が、それも42日間だけ。
ノアが仕事に出かけている間に、オーパルが家に火をつけたのだ。
ノアはなんとかオーパルを救い出したが、彼女は精神病院に入れられてしまう。そこで電気療法や氷風呂によるショック療法が行われていることを手紙で知り、ノアは病院からオーパルを助け出さなければ、と思う。
ところが、正式な夫ではないノアは、二人の後見人である双方の両親の署名なしではオーパルを連れ出すことは勿論、会うことすらできない。そして両親は彼女を病院から出さなかった。
やがて、両親は死に、療養所に移った後にオーパルも死んだ。ノアだけが残った。
時たま訪れるのはマックスだけ。
マックスはノアの息子だった。
なんだろう、この染み出るような切なさは。
今までに読んだことがなかったような、不思議な作品でした。