「さよなら妖精」米澤穂信。

さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

思えば、今年の5月に図書館でふにゃふにゃの「春期限定〜」を見つけたのが始まりの米澤穂信さん。以来既刊をせっせと読んで、この「さよなら妖精」今のところの最後となりました。
なかなかに重い話でございましたね。
タイトルから想像していたものとは全く異なっておりました。
ユーゴスラヴィアからやってきたマーヤと出会い、変わっていった守屋路行君のお話。
ユーゴスラヴィアと聞いた時からなにやら予感させるものはありましたが、ポジティブでありたい私は、祈る気持ちで明るい結末を期待していました。
…そうはなりませんでしたが、これはこれでよかったのだろう、と思います。
こういう出会いもあるんだ、ということを、青少年がこの本を読んで感じ入って欲しいな。
ユーゴ紛争関係は、不肖宮嶋の本を読んでからこっち忘れていましたが、又思い起こされました。そういう意味でも、良い作品だったと思います。
ところで、ちょっと思ったのですが、米澤さんの作品に出てくる男の子って、無気力を気取ってる感じのタイプが多いけど、これほど本気を出した人は他にいないんじゃなかろうか?
続編はないとは思うけれど、守屋君がこの後どんな道を歩んだのか、気になるところです。

書店のレヴュー

雨の日に偶然出会った少女マーヤ。遠い国からやってきたマーヤと過ごした2ヶ月は、何かに熱くなる事がなかったおれに、新しい世界を見せてくれた。◆高校生の青春物語。主人公の守屋路行は、米澤さんの他作品の主人公同様、クール悪く言えば無気力な高校3年生。マーヤと出会い、自分が何をなすべきかを考え始める。◆一応日常ミステリーがあちこちに組み込まれて入るけれど、主眼点は少年のターニングポイントとなる出会い。結末はやるせないけれど、こんなふうに自分を変えてくれる、方向性を見つける手がかりとなった出会いに恵まれた事、それは幸せだったのだ、と後になって考えられたなら、と思った。良い作品でした。06/12/16★★★★