「ブルーベリー」重松清。

ブルーベリー

ブルーベリー

エッセイのような小説だった。おそらく重松さん自身の体験。
大学進学で上京し、在学中に出会ったたくさんの人々のエピソードとその後。
同い年の私にとっては、何もかもが懐かしく感じられた。確かにそんな時代だったな、と感心すること度々。
同じ出来事に遭遇したら、きっと「今」の方がキチンと大人の対応が出来るに違いないと思うこと、そういうのはあるね。19,20なんてまだまだ子どもなんだ。でもそんなこと当時言われたら憤慨しただろうよ<自分。
印象に残ったのは多々あったが、特にあげると、「さらば愛しき牛丼」。同級生の女の子に突然「牛丼食べてみたいから付き合って」と言われる話。彼女は明日留学するにあたって、記念に牛丼を食べてみたかったのだ。これがまたすごく共感するストーリーなんだな〜。当時大学出の女の就職は厳しかったのだよ、本当に。
それと「人生の大事なものは(けっこう)ホイチョイに教わった」。他人から羨ましがられることを目指しているナカムラ君の話。自分が「幸せである」ことを自慢したい気持ち。人もうらやむような人生。しかしナカムラ君は、ある時から自分の幸せを、ひとに自慢できなくなってしまい……。ナカムラ君の心の動きがよくわかり、辛いんだが、こんな結末で良かった、と思ったわ。