「百瀬、こっちを向いて。」中田永一。
- 作者: 中田永一
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2008/05/10
- メディア: ハードカバー
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4つの恋愛小説からなる本作ですが、どれもピュアで、表紙の白とイメージがぴったりくるものばかり。
「百瀬、こっちを向いて。」
命の恩人で尊敬する先輩の頼みで、先輩の彼女と偽交際をすることになった少年の話。
前に読んだときにも思ったけれど、この主人公が何度も自分自身を「低レベルな人間」だと断定しているのが痛くて。でも純粋ないい子だったよ〜何をしてレベル2などと判断していたのか、まあこれも青春ってやつだね。反対にレベル90の人たちの方が不純で汚れている、というのはなんともはや。
「なみうちぎわ」
家庭教師をしていた小学生の男の子が海でおぼれているのを助けようとして一緒におぼれ意識不明に。目が覚めたら5年後の世界だった…。
これはよい。静かに時が流れる純愛ストーリーで若干ミステリー。
「キャベツ畑に彼の声」
テープおこしのバイトをしていたら聞こえてきたのは聞きなれた声だった…。
女子高生が国語教師に恋をする話。これも若干ミステリー。二人が秘密を共有する妙な関係になってちょっとずつ距離が縮まっていく過程が面白い。
「小梅が通る」
コメディータッチ。
美人はちやほやされそうでない人はクズ扱いされる、という世間の真理を知ってしまった女子高生の柚木は人間不信に陥り、以来「ブスメイク」を欠かさない。ある事情から同級生で粗雑な山本寛太に美人な素顔を見られてしまい、つい「妹」と嘘をついてしまい…。
なんちゅーか。中学の同級生の女のセリフがすご過ぎてショックだった。作者はどこかでこういう場面を見たんだろうか、女の嫉妬深さをダイレクトに書いてみましたって感じで実に恐ろしい。柚木は世間知らずで配慮が足りなかったのかもしれないけど。全く人間関係は微妙で複雑怪奇、、、気をつけよう。ストーリー自体はハッピーエンドでよかった。