「深泥丘奇談」綾辻行人。

深泥丘奇談 (幽BOOKS)

深泥丘奇談 (幽BOOKS)

本格ミステリ作家である「私」は、散歩中に激しい眩暈に見舞われ、たまたま通りすがった「深泥丘病院」で診察してもらった。そして成り行きで1泊2日の健康診断を受けることに。その入院中、深夜の誰もいないはずの病室で「ちちちっ」と泣き声が…。


「幽」という怪談専門誌があるんだそうで。そこに連載していたものを集めた連作短編集。気がついたら怪異の世界にずっぽりはまってしまった作家の話。霊とか信じないタイプの人間だった作家さんでしたが、あまりに非現実なことばかり体験して、戸惑ったり、恐れたり。「気のせい」や「夢」のせいにしたものの、次第に夢とうつつの境界も定かではなくなり、あげく記憶も曖昧になって…


これが素敵にシュール!気に入りました。妙だな、と思っても、人に「常識ですよ」と言われれば妙じゃない気がしてくる、人間の心理の面白さ。
掛け軸にできそうなイラストも素敵すぎるわ!
でもって登場人物もとっても謎で素敵。主な登場人物は、作家さんとその妻、看護師の咲谷、医者の石倉(一)、石倉(二)、石倉(三)、、、しかいない。←石倉医師の秘密は、読めばわかる!摩訶不思議な人たちなのだ。
どれもよかったけどお気に入りをあげるなら、「さむざむし」と、「深泥丘魔術団」かな。
それから最後の話「声」。これを読んだときに諸星大二郎を思い出しました。
綾辻さんってきっかりしたミステリの人、と思ってましたが、このようなものも書かれるんなんて、断然ファンになりましたよ!