「うたうひと」小路幸也。

うたうひと

うたうひと

これはよかった。
音楽をテーマにした短編が7つ、全部いい話。若干連作っぽくもある。
ちょっと前に豊島ミホさんの音楽テーマの本を読んだけど、それよりずっといいな〜と思いました。豊島さんの作品は屈折したところがあって、それが豊島さんの味なんだけれど、やっぱり私は幸せな気分の方が好きなんだな。

どれもお気に入りですが、一番は「唇に愛を」かな〜ホーンセクションが勢いがあってかっこいいんだ〜目に浮かぶ様。。。
以下メモ。
「クランプトンの涙」
事故でギターを弾けなくなり殻に閉じこもってしまった往年のスターギタリストの話。ショックで失われた過去の記憶をたどって、原点にいた女性のことを思い出す…。
泣けた。アーチストであり続けるために払われた知られざる犠牲、悲しいけれど結末は清々しい。
「左側のボーカリスト
奇跡とまで言われたデュオだったのに別れてしまった二人が、15年後再び同じステージへ…。
すれ違いが切ないけれど、感動のラスト。
「唇に愛を」
アイドルとバックバンドメンバーの許されない恋の行方。ドラマ仕立て。
愛する二人のために強くて潔いストーリー。いい話だな〜本当にドラマにしても面白そう。
「バラードを」
盲目の天才歌姫が絶頂期に突然の引退。裏側に隠されていた悲恋。
これは辛い。でも前向きなラスト。
「笑うライオン」
人気バンドのドラマー、ずっと音信不通だった母親が病に倒れたことを聞き故郷へ。
何年たってもやっぱり母親は母親。
「その夜に歌う」
町の酒場に現れた身なりの汚い男、皿洗い一つ満足にできなかったけど、ピアノの腕は絶品だった…。
ああ、こんなラストでよかったヨ。小路さんが裏切るわけないよね〜とドキドキしながら読みました。
「明日を笑え」
某有名コミックバンドをモデルに、柔軟で前向きな明るい仲間たちのお話。ミュージシャン魂は忘れないでいて、そのときそのときを懸命に。