「Field,Wind」アンソロジー。

Field,Wind

Field,Wind

「青春スポーツ小説アンソロジー」という副題はちょっと違うんじゃないかなという話もちらほら。ま、私から見ればみんな充分若いんだけど。
才に恵まれた人間ではない人たちが思い悩む話が多かったか。世界で戦えるような人物だけがスポーツをする資格があるわけではないだろうに、と、全然才がない私は思うのだった。スポーツは楽しめればそれでいいんじゃない?
以下メモ。
「ロード」あさのあつこ
30を前に病死した妻との思い出…。ロードは子犬の名前。悲しみから立ち上がり、ロードとともに再び走り始める。切ない。
「サッカーしてたい」川島誠
ろくでもない親に捨てられ施設で暮らすことになった双子。施設仲間のチームで大会に出ることに。決勝で、相手チームから嫌がらせを受けて…。
 『生きてることへの疑問は、なにひとつ解決していない。…でも、サッカーしてたいよね。』
凶暴で捻くれていているのに、子どもらしさもあって憎めない双子。周りの大人が本当にろくでもなさ過ぎて気分が悪かった。
「風を運ぶ人」川西蘭
自転車のジュニアチームに所属している霜嶺陸。自分は天才ではなく努力しても越えられない壁があることを知り、集中力を失っていた。そんな時親戚で兄妹のように育った香織が家にやってきて…。
自分の生きる道を模索し始めた香織に触発され、考え方を変えて自分の役割を見つける陸。これぞ青春スポーツ小説じゃ!
この話が一番よかったなあ。どうやら「セカンドウィンド」という小説の番外編らしい。これは本編も読まなくては。
「氷傑」須藤靖貴
アイスホッケーのキーパーの恭司。監督から引退勧告を受けた。結婚を考えていたので不本意ながらそれに従い事務職に変わったものの…。
父からの手紙が、泣けました。
後悔しないために自分を通すことと、わがまま・自分勝手・後先考えない、は違うよな〜と、ふと思ったり。
「バトン」五十嵐貴久
付き合っていた彼と一緒にリレーに出るはずだったのに、大会を前にして彼は同じチームの女の子と…。
これは、ちょっと痛い。最後は爽やかでよかった。青春だな。
「ガラスの靴を脱いで」小手鞠るい
フィギアスケートのペアで入賞を果たしたのに…。
五十嵐さんのと似たような話なんだけど、全然違う雰囲気で。ラストも含みを持っていて爽やかさは感じられなかった。