「不連続の世界」恩田陸。

不連続の世界

不連続の世界

「月の裏側」の塚崎多聞が主人公の短編が5つ。トラベルミステリー。多聞は「邪魔にならない面白い奴」なので、いろんな人から誘いを受けて各地に出かけ、不思議な出来事に出会う。「月の裏側」はSFホラー風だったけど、これはSF色はあまりなかったかな。どれも不思議な味わい。
お気に入りは、何といっても一番は最後の「夜明けのガスパール」。多聞を含む男4人で夜行列車に乗り、夜通しで怪談話をする、というお話。
他の4つの話は、多聞が他の人物を聞いて事の真相を見出す展開であるのに対し、これは多聞自身が当事者。一挙に多聞の人物像が明確になった感覚がして、ちょっと衝撃的だった。
あとは「幻想キネマ」。ミュージッククリップの撮影のためO市(尾道)を訪れたバンドのメンバーのうちの一人、ベースの保は「映画の撮影現場をみると不幸なことが起こる」という経験を持っていた…、というストーリー。「〜ガスパール」と同じく、人が困難や恐怖に直面したときの心理描写が真に迫っていてドキドキ。