「床屋さんへちょっと」山本幸久。

床屋さんへちょっと

床屋さんへちょっと

今回もお仕事小説ですが、床屋さんの話ではなかった。
父の後を継いで製菓会社の社長になったけれどもいろいろ遭って潰してしまい、繊維メーカーに再就職、今は引退して孫の面倒をみて、墓所を探したりなんかしているおじいちゃん勲さんが主役。
床屋さんはあくまで脇役。私にはよくわからんけど、男の人はちょっとした時間の合間に床屋さんに寄ってみたりするのかな?
そして、もう一人の主人公とも言える娘の香。二人の「今」から「過去」へ遡るような作りになっていて、父の働く姿を娘がどんな風に見てきたかがよくわかる。社会の厳しさに耐えつついつも誠実に働く父親。その父親に反発したり甘えたり、幼い頃は父親によくついて回った娘は、わがままで目に余ることもあったけれども、いまや立派に経営者。

『親の背を見て子は育つ』と言います。勲と香、そばにいる間はなんだかぎこちなくって、わかり合えているようでいないようで。それでも最後は…。
ホロっときました。これは泣けました。
自分はきちんと親をやれているのか、考えさせられました。こんなかーちゃんでゴメンヨ、息子。これでも結構頑張ってるんだけどさ。