「此処彼処」川上弘美。

此処 彼処 (ここ かしこ)

此処 彼処 (ここ かしこ)

「場所」にちなんだエッセイ。エッセイも久しぶりだけど、川上作品もずいぶん久しぶり。
新聞に連載されていたようで、一つ一つがとっても短い何気ないエピソード。なのにどれも「キューン」とする感じ。川上さんのこういう感覚が好きだったな…と思い出しました。
それと何より、川上弘美さんのひととなりがわかったことが収穫。既婚であることや、私より年上だということ、その他諸々初めて知りました。そういう個人的なことを知ると、がぜん親しみがわくものなのですねぇ。


以下メモ。
『246号』 p65から引用。「どうして社会生活においては、道考えても気が合うはずのない人間同士が、何かしらの必要により、合い寄って共に過ごさなければならない羽目に陥ってしまうんだろう。」どうしてだろうね、本当に。
『阿佐ヶ谷』買い物した荷物を運ぶキャリーに「にも」って名づけ話しかける川上さん…なんて愛らしい。
フィレンツェ』の蛸。眠れない夜に目を閉じて心に思い浮かべるもの。この話が一番好き。明かりを付けないでお手洗いに行くくだりが、私と同じ感覚だったので、たちまち距離が縮まりました。