「子どもたちは夜と遊ぶ(上)(下)」辻村深月。
- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/05/10
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普通のミステリーならば、連続殺人事件が起きても今さら心は痛まないのだけれど(それもどうかって気もするが、娯楽で読むフィクションだと割り切れるからいいの)、この作品の痛さは尋常ではなかった。今まで読んできた辻村さんの作品中、読んでいて一番の辛さ…ものすごい疲労感。
辻村さんって心理学を専門に学んだ方なのかな〜今回は虐待を受け続けた子どもの防衛行動をテーマにとことん書いてみたかった、という感じなのかもしれない。子どものトラウマをトリックに使う時点でミステリーではない、と思う。月子の素性を意識的に隠したりとか、iの正体のアレとか、ミステリーの体裁にしたかった気配が感じられるけれども、そういうズルイ小細工はいらなかったじゃないか。傷ついた繊細な心をこれだけ丁寧に描写してくれたら、もう充分。
ラストは、一見救いがあるかのようにみせているけど、私的にはこれはない、と思った。現実をしっかり見据えて生まれた救いが欲しかったよ。
それにしても、登場人物全員、他人のことばかり考えて優しすぎ、自分の身を削ることが美徳と思ってるのだろうな〜それも確かにかっこいいけど、かっこ悪いのが人間として駄目ってことじゃないと思うのです。