「僕の明日を照らして」瀬尾まいこ。

僕の明日を照らして

僕の明日を照らして

義父に虐待を受ける男子中学生の話。冒頭からいきなりの暴力シーンは衝撃的。
しかし重苦しい雰囲気が全然ない不思議。主人公の隼太は、虐待の事実が世間に明かされれば、義父と一緒に暮らせなくなることを心配して、殊更に「たいしたことではない」としようとしているから。


ラストは良いのだけれど、どうにも納得できないんだよね。読み進めるうちに、義父である加害者の優ちゃんがとても良い父親であることが読み手に刷り込まれていって、自然に「暴力」に対して寛容になるかのようなんだ。ちょっとおかしくないか?
絶対に虐待を許してはいけないんだ、ということを、もっともっと強調して欲しかったなあ。現実に虐待を受けている人が読んだとき、こんなふうにしたらDVが治るかもしれない、とか思い込まないだろうか?
母親は、優ちゃんとは絶対に別れるべき。息子のことをもっと知って大事にして欲しいし、真に助けなければいけないのは優ちゃんではなく、隼太だ。