「木練柿」あさのあつこ。

木練柿(こねりがき)

木練柿(こねりがき)

弥勒の月」「夜叉桜」に続く短編集。今回もとても良かった。
遠野屋さんの過去に触れた場面(亡き妻おりんとの出会い)は美しくてぞっとした。こうして徐々に明らかになって、より一層遠野屋さんが魅力的になる。どうかこの人に心の安寧が訪れますように、と願うばかり。同心信次郎がいちいち余計な発言して抉るからさあ〜信次郎に普通の人の幸せは無理だろうな(笑) しかし何だかんだあっても二人が微妙に関係を近づけつつあるようで。きっと今は傷を舐めあう間柄でも、将来的には互いを補う関係に発展させる作戦かもしれない? 
表題作が印象的。前回身寄りをなくしたため遠野屋さんが引き取ったおこまちゃんが攫われる話。うろたえる遠野屋さんと「つまらねえ」と言いつつキッチリ仕事する信次郎…二人ともすっかり人の心を取り戻しているふうであったのに、最後の最後で信次郎の嫌味臭いセリフが腹立つじゃないか。ま、これがないとこのシリーズらしくないんだけど。