「和菓子のアン」坂木司。

和菓子のアン

和菓子のアン

これはとってもいい。「シンデレラティース」系お仕事小説。連作短編の日常ミステリーでお話は5つ。坂木さんの「悪い人は一人もでない」作品は、気持ちが落ち着く。前回読んだ『短劇』はブラック気味で、そのときは「それもアリかな〜」と思ったけど、やっぱりこっちの方が真骨頂ですわ。和菓子の薀蓄も全然嫌味に感じることなく。むしろ和菓子が身近になった。たまにはお茶と上生菓子もいいね。


以下メモ。
主人公梅本杏子(通称アンちゃん)は、ちょっぴり太めで容姿にコンプレックスがあり、男の人が苦手。高校卒業後進学も就職もせず、ニートになりかけて焦り、デパ地下の和菓子店でアルバイトをすることに…。
主な登場人物は、アンちゃん、椿店長(賭け事好きの女店長)、立花くん(イケメンで乙メン)、桜井さん(元ヤンのバイト仲間)。個性豊か過ぎる。特に立花くんのキャラは、最後まで想像しきれなかった(涙)。乙女系男子ってどんなの?
働き始めてまもなく辞めたくなったアンちゃんだったけど、周囲の人々の優しさに触れ、和菓子について見聞を広めるにつれ次第に……。読み始めの頃は、アンちゃんがすぐに辞めたいと口走るのでムッときた〜でも考えてみれば18歳だもんね。怖気づくのも仕方のないことかも。
「和菓子のアン」は人物紹介を兼ねて。上生菓子10個のうち一つだけ違うものを購入していったOLの謎。和菓子の名前には意味もあるってこと。
「一年に一度のデート」お盆のお菓子のこと…会えなくなった人を思う気持ちが切ない。
「萩と牡丹」やくざ風のお客さんに恐怖したアンちゃんのお話。
「甘露屋」売れ残りの商品のこと。デパートの裏事情が赤裸々に。こういうのは…ホントにあるのかな。ちょっと灰色な結末。
「辻占の行方」おみくじ付き煎餅の辻占を巡る謎。椿店長が抱えた辛い過去が…泣けた。ラストのアレは愛の告白じゃないのか?続きはないのか?アンちゃんのコンプレックスを解消させないのか?色々と気になる終わり方だった。