「竜が最後に帰る場所」恒川光太郎。

竜が最後に帰る場所

竜が最後に帰る場所

短編集。お話が5つ。
今回は、全くの異世界ではなく、現実世界の裏にある異なる世界、といった感じか。それぞれバラバラのお話でも、やっぱり恒川ワールドでありました。面白かったです。次は長編でガッツリ読みたいな。
以下メモ。
『風を放つ』よくない精霊を閉じ込めた小瓶を持っているというマミさんのお話。話が咬み合わないマミさんを疎ましく思った主人公。意地悪をして別れたけれど、ある日ふと思い出したひととき。。。本当にびんを持ってたかは別にしても、マミさんは好きになれないタイプね。
『迷走のオルネラ』子どもの時、母親の不倫相手に虐待されたあげく目の前で母親を殺された過去を持つ主人公の復讐。。。実は主人公がオルネラだったのか?
『夜行の冬』冬の深夜に聞こえてくる夜行様の歩く音。祖母から決して外へ出てはいけないと言われていたのに、青年は…。
この話が一番のお気に入り。今ある世界ではなく、もっと違う世界で生きられる可能性があるなら、全てを捨ててそれを求め続けるのもわかる気がする。これも閉塞感なのかなあ。
『鸚鵡幻想曲』「偽装集合体」を見抜く能力を持ったアサノに出会い、偽装を解放されてしまった男のお話。
これも好き。前半はシュール、後半は幻想的。
『ゴロンド』大勢の兄弟たちと共に生まれたコロンドは、生存競争に勝ち残って…。
非常にファンタジーでありながら、こういう生態の生き物も実際にいるのではないか、などと想像してしまいました。竜の帰る場所、どこかにあるかもしれないねえ。