「理由あって冬に出る」似鳥鶏。

理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫)

理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫)

部室が集まる「芸術棟」に現れる幽霊の噂の謎を解く。『放課後探偵団』に収録されていた短編のシリーズ、第1作目にしてデビュー作。
多重債務者の告白らしいプロローグが、高校生たちとどんなかかわりがあるのかと思いきや、そうきたか!と、ちょっと驚き、最後の最後でまたまた驚き。大変面白かったです。登場人物がみんな濃くって会話が若干ラノベちっくな感じでしたが、内容は軽すぎずあくまで現実的、ミステリーとしてもなかなかなもんでした。表紙見ただけだったら読みたいとは思わなかったかもね。続きも読みたいなあ。

「刑事の子」宮部みゆき。

刑事の子 (BOOK WITH YOU)

刑事の子 (BOOK WITH YOU)

下町で起きたバラバラ殺人事件の謎に、刑事の子である中学生が迫るストーリー。
新刊と楽しみにしてたら、昔の作品を改題したものらしい…未読だったから関係ないのだけれど、なんかガッカリ。ま、1994年刊にしてはさほど古っぽくなかったかな。
人としてこれは「やっちゃいけないこと」というものを親たちですら取り違えていないか、わかっていても子らに教えることができていないんじゃないか、と考えさせられました。
しかしYA向けにしては事件が激しく残虐で、どうかと思ったのであまり中学生には薦められないわ。

「ヒア・カムズ・ザ・サン」有川浩。

ヒア・カムズ・ザ・サン

ヒア・カムズ・ザ・サン

7行のあらすじから物語を作る、という企画もの。いろいろ考え付くもんやね。同じ元から2つのお話。編集者の真也さんが、同僚のカオルのお父さんを空港に迎えにいくとこらから。
両方とも20年ぶりに再会する父と娘のわだかまりを、特殊能力を持った真也があと押しして解消する物語だけれども、ひとつめは力強く、もうひとつは優しくて対照的に感じられました。さすが有川さんの技ですね。いつものベタ甘ラブコメはなくて、あくまで大人の雰囲気だったのが新鮮でよかったと思いました。

あああ、でも最初のお話で、クリエイティブな仕事をしてる人はスペシャル、みたいなところが鼻についた、というか。私の僻みですね、そうですね。
余談。今読んでる本に延々と「県庁おもてなし課」があるのは、これを買ったからで、買うと読まない癖で、ずーっと積読状態。正確には「読みたい本」。

「ロートケプシェン、こっちにおいで」相沢沙呼。

ロートケプシェン、こっちにおいで

ロートケプシェン、こっちにおいで

午前零時のサンドリヨン』の続き。学園の謎を解く連作短編の合間に、クラスから孤立し不登校になってしまったロートケプシェンの物語を挟みこんで。
前作よりずっと読みやすく、主人公のキャラもはっきりみえてきて大変面白く読めた。酉野とポチくんの距離がなかなか縮まらないのがイライラした(前作の終わりでくっついたと思ったのに相変わらずだった)。卒業までにハッピーエンド、なるか?
最後の謎解きはビックリで、悩める女の子にウンザリ気分が一瞬雲散霧消した。上手い。しかし女子的にこういう(ハブとかハブとか!)のは永遠になくせないんでしょうかね?ロートケプシェン、辛かった。ウン。

「七人の敵がいる」加納朋子。

七人の敵がいる

七人の敵がいる

ちょっと前に読んだ。ええっと11月。ドラマ化と聞き思い出して。
PTAとか子供会とか自治会とか、地域社会に所属していると逃げ切れない役員選出のイベントの数々に果敢に挑んで戦ったバリバリキャリアウーマン主婦のお話。
もうね、とってもリアルで、居たたまれなかった、最初の役員決めのシーン。どこでも同じなのね。私も空気読めないかな…と今更思ったり(笑)。主人公の陽子さん、最初は正直いやな女だったけれど、次第に痛快爽快。自分の知らなかった世界を研究、理解して自在に立ち回る姿がすんごくカッコよかった。ああ、でも実際にこんなふうにやってみようとかは思わないけど!ドラマはどういうふうにするのかな〜子どもが出るなら何年にも渡る話にはできないだろうな。